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中学受験 家庭教師のマネしたい技術

心の中が恐い人には、用心のしょうがないよ」「商売にも、そういう傾向があるのですか」「人が繁盛すれば、誰でも寄ってくる。 お金の顔が見たいからさ。
赤字会社になると、みんな離れていく。 お金の顔が見えないからさ。
だから、事業は成功しないと哀れだよ。 自分の為にも、世の中の為にも」「その点、うちの部長は、福の神ですって。
家主のHさんが言っていました」「Kさんもそう思う?たしかに、福の神かな。 いつも、契約したお金は、部長が届ける係だからね。
金に好かれる人なのだろうな」僕は、その点は同感である。 いつも僕より金運の良いのは、彼女の方だ。
使う、使わないは別にと、地主さんや家主さんに、人気がある。 人に好かれるということは、自分を感じの良い人間にしなければならない。
努力はしているはずである。 一日三回歯を磨き、にんにくを食べず、目薬をつけ、香水も少しふりかける。

「じゃがいもをいっぱいもらってきた。 近所の奥さんに、配ってくるね」社員に分けて余ると、知人に配ってしまう。
動いているのが好きで、事務所にじっとしていない。 時々、自転車で動いて親しい人に会ったりすると、そこで延々と世間話をはじめる。
取引先に顔を出すが、ちょっとのつもりで訪問すると大変である。 話がはずんで、帰るのを忘れてしまして、若い時から僕より給料が高かった。
親も金持ちで、小遣いももらっていた。 それだけではない。
僕などは、甘い方だ。 お客様を接待する際、つい大金を使ってしまうが、彼女は逆で、金を使わない。
それでいて、相手に喜ばれる。 また、話し方がやさしく、嫌みがないので、どの家主さんからも好かれる。

「部長さんによろしく言ってください。 遊びに来るように言ってね。
その内、良い話もしますから」近頃は、この街で、女房を知らない人はいなくなった。 だから、女房を見ると、「Oe不動産の部長さん」と誰もが言う。
まるで、Oe不動産が自転車で走っているようなものである。 ことほど左様に、女房は、わが社の広告塔となってしまった。
今日もこの広告塔は、よく食べ、よく茶を飲み、笑いころげながら、ピカピカドンドン、どこかで会社の宣伝をやっているのである。 五月も末になると、住宅街の木々は、黄緑の若葉をつけ、庭には色とりどりの花が咲きみだれる。
特に木の葉は目の保養になり、青々と繁った豊かさは、心をやすらかにする。 僕のような中年男にとっては、心を開いて、ゆっくり寄り添える恋人に出会ったような新鮮な気持ちになれる。
緑の植え込みに陽がさし、風が吹き、雨が降る。 週日の暇なある日、一人の紳士が事務所にやって来た。
その太った体と、四角い顔に大きな目。 彼には記憶があった。
確かバブルの最盛期に四十億の土地を探しにきた人である。 物件不足で取引は成立しなかったが、なぜか僕の店を気に入ってくれて、昼食もごちそうになった。
「いらっしゃい。 iさんですね。
しばらくぶりです」「やあ、社長。 その節は、色々とね。
店も、駅前にかえられたのですね。 もうかりましたか「いえ、借りているのですよ。

土地を買うほど、もうかっていません」「お元気そうで、何よりです。 社長はやり手ですな。
本当に頑張れば、ピカーですよ」「手が早いだけですよ。 車はどうしました?」確かベンツの5500に乗っていて、買い替えの商談がうまくいったら、ロールスロイスに乗る、と言っていたはずである。
その時、このベンツはあなたに進呈する、と言われて、僕はあわてて断ったのである。 「替えましたよ」「やっぱり、ロールスロイスで?」「いえ、同じベンツでね。
今度は、地味な色にしました」「そうですか。 無難な色を選んだのですね」意外ではあったが、iさんの人柄がしのばれ、僕は内心ホッとした。
「買い替えで取得した市川のビルは、うまく運営していますか。 僕の方は、遠すぎてお手伝いできませんでしたけど」「うまくいっているよ。
いま、満室でね。 管理人も雇って、収益も上げているよ。
でも、大手はダメだねえ。 自分のペースでやるだけだよ。

あれからもう六年か、早いなあ」熱いお茶をすすりながら、iさんは昔を思い出した。 「買い替えがうまくいって、よかったですね。
買うのも高かったけど、売るのも高かったから、同じことですよ。 損も得もしていないのですよね」「八億円だよ。
女房の奴、俺より金の方がいいってさ。 四十年も連れ添ったのに、女の気持ちが「八億円だよ。
わからないよ」「で、iさんも良い人できたのでしょ?」「台湾生まれの、やさしい女さ。 素直で明るいし、活発だよ。
向こうの女は、頭もいいね。 儒教で育ったせいか、家族を大事にするね。
苦労もいとわない。 これからは、台湾の女がいいよ。
中国人は金にうるさい、と聞いていたけど、悪い意味ではないよ」「へえ、そんなに良い女性ですか」「一緒になって、意外に思ったよ。 家事はきちんとやるし、素直で明るい。

まるで明治女さ。 優しさには優しさで返してくれる。
毎日楽しく生活して、それぞれの神々に守られて長生きする、道教なのだね、死ぬことが嫌いで不老長寿して仙人になりたいのだ」「今どきねえ。 日本の女性は権利意識が強くなったけど、生き方とか生活の知恵について、訓練がないものねえ。
まるで少女雑誌の延長なのだよ。 一流の知名人にしたって、ロクな女はいない、「台湾の女は、いいですよ。
生き方がしなやかですよ。 太極拳の運動と同じですな」「私も台湾の女性は知っているけど、残念ながら日本の女性の方が好きですね。
確かに、あちらの女性は、柔らかい頭で円を描くように生きていますね。 今の奥さんとうまくいっているのですか?」「ねえ、そのはずだったのだけど」と、iさんは首をかしげた。
「心が通うし、お互いに好きなのだけど、毎日の実生活となると、別なのよ。 一つ一つの事について、話し合わないとダメなのだ。
いつも意見が違って、話し合いだよ。 文化の違いは恐いね。
小さなことでも、話し合っておかないと、誤解されるのだよ」「例えば、どんなことですか?」「全てだよ。 例えば、薬を飲むだろう。
その時日本人は、錠剤だけ飲めば、水なしですませてしまう。 すると彼女は、それでは体に悪い、たっぷり水を飲め、と言うのだよ。
漢方薬の方法なんと友人が言っていました」「漢方は、二千年の歴史がありますね」「夫婦の仲が話し合いじゃ、大変ですね」「国際結婚は、こういうものさ。 退屈はしないよ。

珍しくて心がときめくこともあるし、何でもない事で頭が痛くなることもある。 やっぱり、端で見るより楽じゃないね」「でも、iさん、生き生きしていますよ」「まあね、幸せには違いないけど」「良かったですよ。
大変な経験をしたのですから、どうされたか心配していましたよ」「ありがとう。 道に迷ったけど、なんとか光をみつけられたよ」iさんは、嬉しそうに笑った。
「日本人と台湾人は似ているけど、そんなに違うのですか?」「そうだよ。 同じ体格で同じ思想なのに、中身が違う。
目的が同じで、方法論が違うのかな。 「九割ぐらいかな。
後の一割は、無理だね。 納得いかないよ。
でも、日本の国際化なのだよ。 話し合っても理解できない。

だから異質だし、両方とも正しいのだ。 両方正しいから、異質なのだというとらえ方ね。
納得できなくても、相手の意見を尊重せざるを得ない。 文化が違えば、環境も考え方も違うのだから、理解できなくてもいいのさ。

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